2025年、ラストのブッククラブの課題本は『平凡パンチの三島由紀夫』。今年は三島生誕100年ということで、いろんな催しもあり、みなさんの中では作品を再読した人も多いのではないかと思います。

本好きに聞くと、必ずその名前があがってくる作家ですが、「若いときにはハマっても、今読んだらどうなのか?」という存在でもある 。(そこらへんについては、各自が再読してみてほしいのですが、私個人としては『潮騒』に大いに感心しました)

三島という作家についてはいろいろ評伝が出ていますが、知れば知るほど一筋縄ではいかない人物ということが分かっています。頭は抜群に良い。そして、もちろんクリエイティヴでもある。そして、そのクリエイティブが戦後という時代の絶望とシンクロ。シンクロしつつ、資本主義ならではのテレビやメディアの台頭や、今に通じる「誰でも有名人になれる」というベルソナの在り方を自ら率先して体現していくような「軽薄」さとの両立、分裂ぶりは本当に興味深い。


    雑誌は時代を映す鏡だといいますが、学生運動とユースカルチャーに軸足を置いて、体制をかき回した平凡パンチの編集者として三島の連載を担当し、彼と近しい関係にあった著者の筆は、三島の個人像を追うとともに、三島がその時代に選択した「コトとモノ」を結構肉厚に紹介分析しているところもポイント。そんなハードさとともに高峰三枝子をはじめとした周囲の女性たちのシビアな三島評も面白いのですよ。


    タイトルは軽快だが、その内容は、三島の生きた時代の文化クロニクルとしての情報量莫大。いやはや、重くて熱い時代でありましたなぁ。