4月24日(金)、第9回目となる読書会を開催いたしました。

今回の課題本は、ノーベル文学賞受賞で世界に衝撃を与えたハン・ガン氏の代表作『菜食主義者』。


前回の課題本の村田沙耶香作品の「アンチ・ヒューマニズム」とも響き合う、作品でした。
※以下ネタバレを含みますのでご注意ください。

■ 1部:少人数で語り合う、読書の「手ざわり」
まずは3〜4名のグループに分かれての感想シェア。
「なぜ彼女はここまで拒絶するのか?」「夫の無理解がリアルすぎて辛い……」といった声から、第一章のラストシーン、主人公ヨンヘが小鳥を噛んでいた(かもしれない)描写を巡る鋭い考察まで、各部屋で熱い議論が交わされました。

■ 2部:湯山玲子レクチャー「人間存在からの脱走と、アートの暴力性」
後半は、お待ちかねの湯山さんによるレクチャータイム!今回も知的好奇心が刺激されるキーワードが次々と飛び出しました。

1. 「聖なる存在(ユロージヴィ)」としてのヨンヘ
湯山さんが指摘したのは、ヨンヘの変容は単なる「菜食主義」の枠を超えているということ。
「聖なる存在(ユロージヴィ)」としてのヨンヘが、真実を教えてくれるという物語だと、まず指摘がありました。

「ユロージヴィ(Yurodivy / Юродивый)」とは、ロシア語で「聖なる愚者」「佯狂者(ようきょうしゃ)」とも呼ばれる、特異な宗教的・文化的現象のことです。

湯山さんは、ユロージヴィを表現した作品と思う作品事例を次のように挙げてくれました。

ドストエフスキー著『白痴』のムイシュキン公爵

ドストエフスキー著『カラマーゾフの兄弟』のアリョーシャ

ロバート・ゼメキス監督『フォレスト・ガンプ 一期一会』

ヴェルナー・ヘルツォーク監督『カスパー・ハウザーの謎』

「肉を食う=殺生という暴力」を拒絶する彼女は、もはや人間社会のシステムに居場所はなく、「人間存在そのもの」から脱走しようとしている。
最後には逆立ちして「木」になろうとするその姿に、湯山さんは一種のキッチュ(俗悪な美)の極致との美学を見出しました。

2. 社会の「俗物」たちが照らし出す真実 物語の語り手となる「夫」「義兄」「姉」

• 夫: 自分の感情システムを守るために他者を遮断する「大衆」の象徴。

• 義兄(ビデオアーティスト): 聖なる存在に触れてしまい、社会の扉(常識)を壊してアートの深淵へダイブしてしまう男。

• 姉: 家族という呪縛の中で、唯一ヨンヘを「自分のこと」として理解しようとする、地上に縛り付けられた重み。

この三者三様の視点があるからこそ、イノセントなヨンヘの異質さが際立つのだという構造的な分析に、メンバー一同深く頷きました。

3. 「エロス」はアナザーワールドへの入り口 第二章「蒙古斑」で描かれる性描写について

それは単なる欲求不満の解消ではなく、「職を離れた至高の体験」。京都の島原の太夫やギリシャ神話の神託のように、性を介して日常とは別の世界へ接続しようとする表現のモチベーションについて、湯山節が炸裂しました。

■ 印象的だったトピック:電気グルーヴとのリンク
レクチャーの終盤、湯山さんが紹介したのは電気グルーヴのMV『Nothing's Gonna Change』。
https://youtu.be/ijG1Xvj5c50?si=FMKC8bcCMWlW0oDz
スクリーンショット (392).png 2.5 MB 残酷な物悲しさと、生命の変容を感じさせる映像を共有し、「ヨンヘが植物になっていく感覚」を視覚的にも体感する、当サロンならではの贅沢な時間となりました。
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参加者の声 🗣️
「第一章ラストのメジロのシーン。暴力から逃れたいのに、自分の中に湧き上がる『捕食者の本能』に抗えないヨンヘの葛藤を湯山さんの解説で聞き、納得できました」

「自分をゼロにしたい、木になりたいという究極の静けさ。今の時代のパワハラやポリコレとの感覚とも地続きに感じて、現代的な物語だと再認識しました」
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📚 次回のお知らせ
次回の「ワルい子ブッククラブ」は……
日時: 5月25日(月)20:15〜スタート
課題図書は、塩崎 省吾(著) 『カップ焼きそばの謎』(ハヤカワ新書)です!


カップ焼きそばの解像度が100倍上がる!    唯一無二の“熱闘列伝”
カップ麺市場で醤油ラーメン以上に人気のカップ焼きそば。食べ比べるとそれぞれ特徴的な味だが、そこにはメーカー各社の熱意と創意、熾烈なシェア争いの歴史が刻まれていた!    UFO、ペヤング、ごつ盛り……もうひとつの「国民食」が織りなした半世紀を描く。

気になった方は、ぜひこの機会に一緒に語り合いましょう!
ご参加お待ちしております😸

また、湯山玲子カルチャーサロンでは湯山さんとトークや観劇を楽しむオフラインイベントを定期的に開催しております。
ご入会もお待ちしております!
https://yuyamareikocultureclub.com/about